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発達障害を
ユニーク=
ヒューマニティ症候群

呼んでみませんか?

突飛な提唱ですが、最後までお読みいただければ幸いです。

医療・教育・行政の方々へ

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(※あくまで私見としてお読みください。一般の方は読み飛ばして頂いて構いません)


従来の統合失調症には、かなりの割合で発達障害が含まれているような気がしてなりません。手のつけられない衝動的暴力、被害妄想的ではあっても被害妄想とも言いきれない妄想、統合失調症にしては人格や知能、社会性が保たれている、そんな症状を呈する一群です。


周囲は困り果てて精神科に相談に来る。出来ることは鎮静しかなく、統合失調症として診断され、隔離や拘束、処方を受けている場合もあると思います。幻覚体験も伴うと思いますが、明確な幻聴でもなく、明確な幻視でもない(元々幻視は統合失調症では少ないはず)あいまいな幻覚体験。これらは発達障害(時にはPTSD症状も含め)で説明出来るのではないかと感じています。


治療反応としても、抗精神病薬(主に統合失調症に用いるいわゆるメジャートランキライザー)が効きにくいように思います。


被害妄想は「敏感」だからではないのでしょうか。敏感さは発達障害の一つの特徴と思います(特にASDにおいて)。暴力は「衝動性」だと思います。この一群にはプレコックス感(統合失調症では表情が硬かったり奇異な印象があります)が少ないように思います。


ちなみに、人格や知能、社会性が保たれているのも一つの特徴と思っています。人格が保たれていて思考障害がない統合失調症では、一度は発達障害の観点から診断を見直してもいいと思っています。


また、双極性障害の躁で説明のつかない躁状態があると思います。過集中、過行動ではあるものの、躁状態とは言い切れない状態を呈する人々です。これは、発達障害の「多動」であったり、興味への「過集中」から説明がつくのではないかと思います。場合によってはPTSDの過覚醒症状で説明ができる場合も決して少なくないように感じています。いわゆるⅡ型の双極性障害では、ベースに発達障害やPTSD症状がある場合は少なからずあると思っています。


うつ病や不安障害のベースに発達障害の可能性は指摘されています。発達障害ゆえの適応障害の人も多くいると思います。それよりさらに踏み込んで考えれば、時に、夫婦であれば相手に発達障害がある為に、常識的な側が苦しんでうつ状態や不安状態になる人もいると思います。家族内のトラブルで自分が病んでしまって受診してくる人もいると思います。しかし、家族内にいる発達障害を持つ人に根源的原因がある場合も少なくないと思います(カサンドラ症候群など)。一時期話題になった新型うつ病の多くは、ベースに未熟な人格が存在する可能性を指摘されましたが、発達的特徴も考慮に入れるべきとも思います。さらにはトラウマ体験からのPTSDの可能性や気分変調症の可能性も考えるべきだと思います。


他、広場パニックなどの各種パニック、解離症状、離人症、高所恐怖症、身体表現性障害(過敏性腸症候群など)、あらゆる依存症、境界型人格障害、妄想性障害なども発達障害やPTSDがベースにあるかもしれないと慎重に見る必要があると思います。


多重人格(解離性障害)というものも、根底には発達障害やPTSDがあるのかもしれません。発達障害の人々の一つの特徴として「拒絶と受容」があると思いますが、その拒絶の原因にトラウマ体験があるかもしれず、拒絶ゆえの解離かもしれず、拒絶と受容が併存することで二重人格的な性格を作っているのかもしれませんまた、統合失調症のいわゆる「両価性(両極端な好悪や愛憎)」も、実は発達的特徴から説明ができる場合も少なくないと思います。


人格(パーソナリティ)障害は、発達障害や愛着障害やPTSD症状が理解されずに、周囲や社会、医療が作り上げてしまった結果かもしれません。反社会性パーソナリティ障害では幼少期に虐待が多いのは事実と思います。それならば、トラウマ体験やPTSDを考えて理解していかなければなりません。また、境界型パーソナリティ障害でも幼少期からの自分に対する理解の低さに不満を持っているケースが多いように思います。アスペルガー症候群(現在ではASD)も周囲の理解が無いまま、結果として思考形態が歪んでしまった状態なのかもしれません。


発達障害の、特に衝動性(多動衝動<感情衝動)は、年齢的には、20代-30代まで症状が激しく、かつ、社会的にも悩みが生じやすい(職場が長続きしない等)と思います。しかし、40代に入ると落ち着く場合が多いように思います。合理的な人間観察者であった孔子は40歳を「不惑」と呼びました。決して無関係なことではないように思います。パーソナリティ障害の有病率は全人口の12-20%とも言われます。また、感情の振れの大きい境界型パーソナリティ障害も、40歳までに過半数が診断基準を満たさなくなるとも報告されています。これらの数字を見たとき、私は「パーソナリティ障害と発達障害とは非常に近接している」と感じざるを得ません。


ただし不注意」に関しては、40代に入っても残る、もしくはより低下する可能性があると思います。あまり注目されていませんが、中年期以降も「不注意」や「物忘れ」は治るわけではなく、認知症と異なる形で残るのではないかと思っています。衝動と不注意の両方があり悩んでいた人が、年齢を重ねることによって衝動性が落ち着き社会的にそれなりに適応できるようになっても、注意力の低下(注意不安)から「オレオレ詐欺」の被害等に遭っている人々は少なくないように思います(つまり認知症が原因ではなく発達障害から)。あくまで私の個人的な考えの域を超えませんが、「大人の注意欠如」が、詐欺や代替医療(疑似医療)の対象になっている可能性があるのだと感じています。認知症であれば振込みという行為がスムーズには出来ないとも思うのです。特殊詐欺という言葉も使われ始めましたが、その被害者を理解する鍵に大人の発達障害がある可能性は指摘できると思っています。


また、交通事故や怪我を繰り返している場合も「注意欠如」という観点からの診断や治療など、医学的なフォローも考えるべきだとも思います。本人は悪気もなく、一番苦しんでいるのは事故を起こしてしまった本人だと思います。理解力はあり、自分の起こした事柄への後悔もあり、実際には、周囲が思う以上に苦しんでいるのだと思います。また、高速道路の逆走をする人には認知症があると考えがちですが、若い人でも高速道路の逆走をする人はいると思います。その理由に「大人の注意欠如」等があるならば交通行政では様々な場面で、改めて人の持つ発達的特徴を考慮していく必要があるかもしれません。


他、発達障害の人は人生での失敗や後悔から「代替医療(疑似医療、疑似信仰)」にのめり込んでいる人も多いように思います。孤立感に苦しんでいた人や、社会に常に違和感を感じている人には、探し求めていた"本物"に出会えたと思うのかもしれません。PTSDでは劇的な救済に魅力を感じるとの指摘もあり、悩んでいるところに「人生が180度変わる」と言われれば、すがりたくなる気持ちが生じるかもしれません。ただし、そういった物を選ぶこと自体に注意欠陥があると思われます。


社会現象としては、他には、ホームレスの人々に発達障害が多いとされていますが、そうであれば、さらなる認識のもとでのサポートの必要性があると思います。若い女性の貧困の背景に発達障害が隠れている気もします。また、多重債務者にも発達障害が関連しているようにも思います(計画性がなく、ギャンブル依存にもなりやすかったり、意志が弱く、他人の保証人になって借金を背負ったり等)。非行の問題にも、多くの関わりがあるようにも思われます。



あくまで私見ですが、苦しんでいる人々の中に医療で救うべき人々が相当数いて、社会の中で苦しみながら、誰からも手を差しのべられていない気がします。その人々を救うためにも、精神科領域のみならず、社会として取り組むべき課題だとも思っています。


外来での発達障害の患者さんが増えています。適応障害だけで説明がつかず、うつ病の治療をしても根本解決にならず、不安に対しての治療をしても社会生活が難しい。従来診断で除外をいくら重ねても、どうしても発達障害と診断せざるを得ない人々です。


精神科医や医療が適切に社会に関わることで社会は変わると思います。そのことで精神科への偏見や差別が減れば、どれだけ患者さんたちが救われるか分かりません。


社会はより専門化、細分化されています。しかし、もっと大局的、客観的に全体を見直すべきと感じます。私は、発達障害(加えて愛着障害やトラウマとPTSD)を見直すことで、国際的な精神科の診断基準も大きく変わるのではないかと思っています。



(2014.11.20 公開 2018.9.6 更新)

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