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発達障害を
ユニーク=
ヒューマニティ症候群

呼んでみませんか?

突飛な提唱ですが、最後までお読みいただければ幸いです。

トラウマとPTSDとは

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トラウマとは心が傷つくことを意味します(トラウマ=心的外傷)。そしてトラウマを受けた体験のことをトラウマ体験と呼びます。体の表面に傷が生じればそれは目に見えます。しかし心の傷は目に見えません当たり前ですが、トラウマにおける大きな特徴と言えます。


その心の傷が自然に癒えればいいのですが、トラウマ体験の後に様々な精神症状が出現して日常生活に支障をきたすことがあります。それを「心的外傷後ストレス障害、略してPTSD」と呼びます。


心の傷は目に見えないためどうやって捉えればいいのか。実はそこに難しさがありますが、注意深く観察するとPTSDの症状を捉えることができます(症状については次ページで詳しく述べます)。



PTSDは大きく二つに分けて考えるようになっています。元来からのPTSDの考え方(大きな単回のトラウマ体験によってPTSDが生じる)に加え、小さなトラウマ体験を積み重ねることでもPTSDになり得るという考えが出てきたからです。この後者の場合を「複雑性PTSD」と呼ぶようになっています。


まずは従来のPTSDの考えですが、

命にも関わるような重大なトラウマ体験をした場合に後にPTSDが生じ得ます。

 命を失いそうになったり、命に関わるような経験をした

 戦争体験、大きな交通事故、大規模な自然災害、大きな犯罪被害などに遭遇した

 性的に非常に辛い被害を受けた

などが該当します。PTSDの概念はここから始まっています。


それに対し複雑性PTSDでは
命には関わらなくても辛いトラウマ体験を積み重ねた場合に後にPTSDが生じ得ます。

 体罰や虐待などでの恐怖があった、それが日常的に繰り返されていた

 いじめ体験が非常に辛かった、いじめ体験を繰り返し受けていた

 家庭や学校、職場などで心を強く押さえつけられる体験を受け続けた


これらは虐待や暴力などに該当しますが、家庭内で親の暴力シーンを見る体験などでもトラウマ体験は生じます。アルコールなどの依存症の親がいる家庭(機能不全家族)で子供の心に抑圧が続いた場合もトラウマ体験となり得ます(私は子供の心に抑圧を強いることは、心の虐待や心の暴力だと思っています。子供本来の伸びやかな心が踏みにじられたり、自分の気持ちを出せずにいい子を演じることを強いられることは、実際には相当に辛い体験のはずです)。これらの体験で心が傷ついた場合にも後にPTSD症状がみられ得るのです。また、厳しすぎる躾けや、教育などで子どもに選択の自由が全くなかったり、苦手なことがらの克服を強要しすぎることなども、トラウマになり得ます。



小さなトラウマは生じても、忘れてしまうことが多いと思います。しかし、上記のように大きなトラウマ体験や辛いトラウマ体験が繰り返されることで、PTSDや複雑性PTSDが生じてしまいます。そして、長い時間を経てからPTSD症状が生じる可能性も指摘されるようになっています。次ページでPTSD症状について具体的に説明したいと思います。



(2016.3.30 公開 2018.9.2 更新)

〈発達的な特性とトラウマやPTSDとの関連〉

主に小児分野ですが、発達的な特性があるとトラウマ体験を積みやすい指摘がなされるようになってきています。育児において発達的な特性があると対応が難しいことなどから、親が子育ての中で虐待をしてしまう場合もあり得ます。実際には親にも発達的特性がある場合もあり、子育てで非常に悩んでいる場合が多いのも実情です。誰が悪いという問題ではない場合の方が多いと感じます。


また、個人的に指摘したい点としては、発達的な特性でもとりわけASDの傾向を持つ場合、感受性が非常に高かったり、感覚の過敏性を持っている場合が多くみられます。すると、小さな事柄でもトラウマ体験になってしまう場合も、実は多いのだと思います。この認識はまだ一般的にはなっていませんが、今後、そういった視点での臨床報告が増えると思っています。


社会の予想以上にASDの傾向を持つ人が
多いと推測されるなか、それに伴ってPTSD症状を持った人もまた多くいると考えなければならないと思っています。これは小児でも成人でも基本的には同じだと思っています。


実際、臨床場面でPTSD症状の視点を持って診断を見直してみると、予想以上にPTSD症状を持っている人が多くいます。発達障害と診断を受けていなくても、Ⅱ型うつ病、Ⅱ型双極性障害、治療抵抗性のうつ病、人格障害などの診断の場合、実はPTSD症状で捉えなおすことが出来るケースは少なくなく、そしてPTSDの診断のもとでトラウマに対する治療を行うことで、それまでなかなか改善がみられなかった場合でも、症状が改善していくケースが多々見られます。


精神科の治療場面で典型経過を辿らないケースでは、発達的な特性の有無だけでなく、PTSD症状の有無も見直し、隠れているトラウマ体験がないか検討する必要があると思っています。

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