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発達障害を
ユニーク=
ヒューマニティ症候群

呼んでみませんか?

突飛な提唱ですが、最後までお読みいただければ幸いです。

自閉スペクトラム症(ASD)とは

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自閉スペクトラム症を略して「ASD」と呼びます。主な症状として「こだわり(特定の何かへのこだわりが非常に強いなど)」や「コミュニケーションの障害(コミュニケーションの苦手さなど)」「想像力(社会的な物事の想像や常識的な理解など)の偏り」があるとされます。旧来の自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群はここに含まれます。一般的には治療できないと考えられています。


その点に対しあえて私見を述べれば「完治はできないかもしれないものの、治療によって日常の困難さはかなり減らすことはできる」と考えています。簡単に言えば、多くの場合で治療介入が可能だと考えています。


「こだわり」は従来からの診断基準でもありますが、多くの成人期の患者さんと話をしているなかで感じることがあります。それは、こだわりを生じさせる「内的な衝動」が常にある、もしくは何かのきっかけで生じてしまう可能性です(突然強く生じる好奇心や止められない思索や感情など)。まだ個人的な考えですが、私は、こだわりの原因に多くの場合で「内的な衝動」があるのではないか、と考えています(これはADHDの落ち着かず動き回りたいといった多動衝動とは異なり、イメージとしては奥深くに存在し、持続して存在する炭火のようなものと思います。炭火でも、空気を送れば炎は強くなり、また炭火ゆえになかなか消えません。ADHDではあまりいい表現ではないのですが「そそっかしさ」があり、衝動といっても移り気しやすい、イメージとしては表面的なものではないかと思っています。いずれにしても、ASD、ADHDともに何らかの衝動があり、その鑑別が難しいのも事実です)。


また、ASDの傾向のある人では、多く人が「何らかの感覚などに高い感受性を示す」ように思います。よくあるものとしては「音への高い感受性、過敏性」です。他には、光、匂い、視線などもあります。視覚的に多くの情報が入ると疲れてしまう「視覚の高い感受性」の人も多いと思われます。この場合、人が苦手とか嫌いなのではなく「人が多くいる状態自体が辛い」場合があると思われます。街中などの人混みにいくと酔ってしまったり、大人数の講義や授業の途中でダウンしてしまったり(ADHDにも間違われたり)。これは視覚的に高い感受性があり、視覚情報が入りすぎてオーバーフローしてしまう状態が原因ではないかと考えられます。ちなみに、これらの結果として「社会的なコミュニケーション障害」と捉えられてしまうことも多くあると思います。本当は、高い感受性ゆえのコミュニケーションの辛さなのだと考えることはできると思います。(※後述しますが「過敏性」についてはDSM-5から上位の診断基準に入りました。研究者によっては1970年代から指摘していた事柄が、ようやく認められたといった感じであり、学校現場などでは、ASDの特性のあるお子さんの過敏性には気が付いていたのだと思います)。


すこし専門的な話になりますが、こんな風に考えていると、こだわりやコミュニケーション障害もすでに「二次障害」なのではないかとも思ってしまいます。一般的にはASD(一次障害)があり、その特性ゆえに「うつ病」や「不安障害」などの二次障害が生じてしまうと言われていますが、ASDの本質が本当は何なのか、そのことを常に探求していくことが大切なことだと思っています。何故なら、そのことによって何らかの新しい治療法がみつかる可能性があると思うからです。「治らないという考えを治していく」ことは、私は出来ると思っています。今後の診療を続ける中で考えが変化するかもしれませんが、今の段階で、私は「内的な衝動」と「高い感受性、過敏性」こそがASDの本質であり一次障害ではないかと思っています。


もちろん環境調節が一番大切です。本人の持っている辛さをすこしでも減らしていくことが、一番の基本になると思います。それは家庭、学校だけでなく、社会も理解していかなければならないことだと思います。後述しますが、感受性の高さゆえのトラウマは生じやすいと考えます。成長する段階で虐待や愛着障害がないことはもちろん望ましいことですが、意外に些細と思われる事柄でも「ASDの傾向がある場合、高い感受性ゆえにトラウマ体験を積みやすい」という認識を、より一般的な認識にしていく必要があるようにも思っています。



治療に関し少し述べてみます。


内的な衝動に対しては、少量のアリピプラゾール(商品名エビリファイ)等が有効な場合は多いと感じています。ASDの「易刺激性」に対してアリピプラゾールは適応もあり、日本の臨床の現場でも広く用いられています。癇癪など感情コントロールを主眼に処方される場合が多いと思われますが、これは実は、内的な衝動に効いている場合が多いのではないかと感じます。個人的には「易刺激性=過敏性+内的衝動」ではないかと考えて診療をしています。アリピプラゾールはこの「内的衝動」に効果を示し、その結果として、易刺激性が軽減されるのだと思います。また、アリピプラゾールは抗うつ作用も持っています。


高い感受性、過敏性にはいわゆる安定剤(ベンゾジアゼピン系薬(BZ系薬)など)や気分安定薬(バルプロ酸、リチウムなど)が有効な場合は多くみられます。成人の精神科治療では従来から神経症に対しBZ系薬などの処方がなされていますが、実は、それによって過敏性が緩和し不安が軽減していた「隠れASD」の人も多くいたのだと思います。また、自閉症の患者さんで、歯科治療が怖くて仕方がなかった人が、ジアゼパム(BZ系薬の一種)の内服で、周囲の支援者さんも驚くくらい普通に抜歯ができたケースもあります。易刺激性のケースで「過敏性」に対する治療としてのBZ系薬だけでも症状が落ち着く場合は少なくないと思います。


何が有効な治療手段なのかは簡単には判断できません。しかし、日々の辛さを持っている本人との対話を通し、様々な角度から考え、共同作業として日々の辛さを減らしていく作業が発達障害の診療なのだと思います。

また、現在はASD自体に適応はありませんが、ADHDの治療薬であるアトモキセチン(商品名ストラテラ)によって日常生活の質の向上がみられる場合も多くあると思われます。ASDにADHDの合併のある場合でアトモキセチンの処方をした場合、注意力が改善する以外に、日常生活の質の変化が多くの場合でみられます。これは、アトモキセチンに抗うつ作用や抗不安作用があるからと思われます(ASDではうつ症状や不安症状の並存は多くみられます)、ASDの傾向のある人が従来の予想よりも多く、さらにそれらの人々への治療を考えた時、日常の辛さを減らせるもの(アトモキセチンはその一つ)があるのであれば、その点にも目をむけていくことも必要ではないかと思っています。


他にも、ASDに対して有効と思われる治療は漢方なども含めて幾つかあると思っています(PTSDのページでも触れる予定です)。今後、ASDは治療介入が可能ではないか、という視点が広まれば、より有効な治療がさらに見つかるかもしれません。



大人の発達障害の治療は、実は「神経症」の診断のもとで、すでに行われてきている従来の日常診療のなかにあるのかもしれません。主に成人を対象とする精神医療が発達障害に改めて身構える必要はなく、出来るところから治療介入していけばいいのではないかと思っています。



(2016.3.2 公開 2018.9.2 更新)

統合失調症と診断されていた人が、症状が落ち着いてきてアリピプラゾールだけで外来フォローされている人が時々います。こういった人は、もしかしたらASDがベースにあって、ストレス時に一過性に精神病に見える症状を呈したのかもしれません。それが解離症状と呼ばれるものであれば、なおさら診断はASDではないかと思ってしまいます。※ただし、一見発達障害に思える統合失調症の患者さんもいます。だからこそ診断は難しいのだと思います。


精神科の外来には、すでに多数の大人の発達障害の方がいるのだと思います。現在の治療で概ね落ち着いていればそれで治療はいいかもしれません。もし、なかなか病状が安定しなくて、かつ発達障害の傾向があるかもしれないと考えるならば、一度そういった視点から症状を見直してもいいのかもしれません。

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